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TOP > リスクアプローチの本質 (2004/3/28)

 会計監査はリスクアプローチが原則となっている。ちょっと前の新聞では「アメリカではリスクアプローチが徹底しているから監査は信頼できる。日本はリスクアプローチが完全でないから、日本の監査は信頼できず、遅れている」という報道がよくあったものだ。エンロン破綻あたりから、その論調も少なくはなったが・・・・。
 そもそもリスクアプローチとはナンだろうか。
 その本質は、

A点: リスクが高く重要性が高いところは重点的に監査を行い、リスクが低く重要性も低いところはテキトーに流して仕事をしても監査の質は高く保たれる、という、
ごく当たり前のこと

 である。と考えられているが、実務上、もっと大事なことがある。
 それは、

B点:リスクアプローチでの判断の根拠を
説明可能なドキュメントに残せ (第三者の批判に耐えられるようにしろ)

 というものである。

A点に関して言えば、日本もアメリカも変わりなく、重点事項は重点的に、瑣末事項はテキトーに、ということは以前から行われていたはずである。そこに監査技術の差があるわけではないと思う。
 さて、昨今求められているのは、B点である。つまりは文書に残せ。監査調書に書けということだ。実は結構これはしんどいのだ。書くのは時間がかかるし、なんといっても「担当会計士の感覚から言って当たり前のことをわざわざ文書に残す必要がある」からである。とはいえ、会計士はこれまでクライアントに対して、「文書に残せ」「証拠を残せ」ということをくどーくくどーく言ってきた。監査のために必要だからである。実は、
証拠を残せとくどーく言っっていた会計士が、「証拠を残していなかった」というのは皮肉なことだが、この業界もピアレビューにより、監査を検証する体制になってきたので、監査もちゃんと判断の根拠を残しておけ、ということになってきたのだろう。
 私は、海外の監査に詳しいわけではないが、どうも外資系の方の話を聞いていると、リスクアプローチは自らの訴訟責任逃れのための
テキトーな理屈付けのひとつ、と考えている節があるようでならない。

リスクアプローチは、本来的には、「監査の効率化」のためにある。その効率化を生かして余った時間でさらに強固な監査を行うことで、「効果的な監査」に貢献できるといいうものである。そう、リスクアプローチの本質は「効果的な監査」に直接役立つというわけではないのだ。あくまでも「効率的な監査」のために必要なだけなのだ。だから、リスクアプローチが行われているかどうかで、監査の質など直接的に測れるわけではないのだ。(尤も、これまでにリスクアプローチうんぬん以前の、いいかげん監査をやったいた監査人に対して、リスクアプローチを強要すれば、まあ、監査の質は上がるという効果はあるかもしれない。最底辺に生息する監査人の質向上にはつながるかもしれない。)
 昨今のリスクアプローチの実務はB面が強調される余り、その時間がかかるため、結局、効率化になっていないと思う。これまでちゃんとやってきたところからすれば、面倒な事務処理が増えた分、実質的な監査手続きに割く時間が少なくなってしまい、リスクアプローチの徹底が結果的に監査の質低下を招くという皮肉な事態も考えられる。

ちょっととりとめがないがこんなもんでゴメンナサイ。

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