TOP > 三次試験における専門学校の役割&専門学校批判
三次試験を受ける者は皆、二次試験を合格した者である。
したがって、基本的な会計・監査の素養があるはずであり、試験に対する取り組み方も自分なりのものを持っているはずであろうと思う。
で、あれば専門学校の三次試験講座はどうあるべきか。
私は以下のように考える。
この前提には、多くの方が賛成してくれると思うのだが・・・。
<前提>
専門学校でいくら講義、答練を行っても、結局、自分で時間を作って知識を入れるなり、問題を解くなりしないと合格できない。
<専門学校の役割&批判>
会計・監査
会計・監査については、「どこまでが試験範囲か」という範囲を示してあげることがもっとも重要である。
なぜなら、会計・監査はもはや専門家として独学で勉強できるはずであり、どこを勉強すればよいかさえ教えれば、あとは自分で勉強すればよいのである。
これについてはこういう反論でもでそうである。「自分でやるしかないのはもちろんだが、それぞれ得意分野、不得意分野がある。例えば私などは、退職給付について実務でかかわる経験がなかったので、そこは詳しく解説して欲しい」
そうですね。こういった各個人の要望をすべて聞き入れたのがTACに代表される講義テンコモリカリキュラムになるのでしょうね。
でも、これって「合成の誤謬」と思いませんか?
各個人が合理的な要望を専門学校に行い、専門学校がすべての要望に応えると、すべての人が音を上げるぐらい、多量のカリキュラムになる。
気持ちはわかります。私にも弱い分野はあるし、そこはもう少し解説して欲しいなあ、という部分もありました。
でもね、もう、会計監査の素養はあるのですから、自分で勉強しましょうよ。・・・・と専門学校は言えないんだろうなあ。
そう、だから受験生の言うことをホイホイ聴いてしまう専門学校は、ぜったいにイッテハイケナイのだ。
個々の要求は正しくとも、それをすべて叶えようとすると、全体としてサイアクになるのだ。
次に、予備校がやるべきことは「出題可能性の軽重」の提示である。
例えば、「ローンパーティシペーションは、最近は流行っていないので、出る可能性は少ないでしょう。」とかですね。ABCランク付けみたいなもんです。いいんですよ、はずれたって。
予備校は怖いから、なかなか「これは出ないでしょう」っていいにくいのだ。
逆にリスクヘッジのために「出ないとはいえない」「出る可能性もある」みたいに感じで矮小な論点もまるで重要論点のように解説し、どんどん量が膨大になっていくのだ。
そして、予備校があるべきことのもうひとつは「ポイントのみの解説」である。
実務で問題にぶち当たると、その事例に関係することはよく調べたりするのだが、全体像を見落としたり、ちょっとだけ条件が変わった場合についての検証まではやらないことが多い。つまり、実務だけで完全に穴をなくすのは無理なのだ。だから、バランスを失わないようにポイントだけを解説しておくことは、有意義だろう。ただし、この項目のプライオリティは低い。
これを書くとこういう反論もできそうである。「そのポイント解説だけで、大量のカリキュラムが必要なんだ!」
それはそうかも知れません。でも、それは時間とのバランスを考えなければなりません。
多くの三次試験受験生は、平日に仕事をして、土曜日か日曜日に専門学校に行ったり、通信で勉強したりするわけです。どんなにがんばっても、確保できる時間はしれています。二次試験の比ではなく少ないはずです。であれば、最終的には自分で勉強する以外ないのですから、この自分で勉強する時間がとれるように、専門学校の講義時間は少なければ少ないほどよいのです。
だからこういいかえましょう「全員が不得意分野なしと思って、ポイントのみを解説する」つまり「知っていると思うけど、確認です、という点と知っていると思うけど、ここは盲点です。」という部分だけ解説するのである。
それでも、「そのポイント解説だけで、大量のカリキュラムが必要なんだ!」というのであれば、それは講師の認識が違うか、無駄な講義時間を使っているかだと思います。
私見では、会計3コマ、監査3コマで上記講義は十分に終了すると思います。
(一コマ3時間で考えています)
(TACは会計・監査で30コマ以上)
講義テキストについて。
いらない。
監査小六法をテキストにすべきである。
小六法に載っていないものだけを、テキストにするのがよいだろう。
監査法人に勤務していない人のために、「標準監査マニュアル」を配るのは如何だろう。
LECには大変お世話になったが、講義テキストだけは、講義で聴いているときしか開かず、あとは本棚の肥やしになっていた。
だって、小六法に載っているんだもん。
そして答練。
答練の回数は少なくてよい。
ただし、参考問題は余分に提供する必要があるだろう。
三次試験の答練は、「ある時間内に全力を出して問題を解く練習を思い出す」ことにあると思います。つまり二次試験の緊張感を取り戻すためですね。慣れるためでなく、思い出すためにあるのだから、少なくてよい。たくさんあったら、また自分の勉強時間が削られるではないか。
ただ、3時間という試験時間は始めてであるから、何度かは3時間の答練を受けるのが望ましいだろう。
そういう点で、TACが一部に3時間答練なるものを取り入れたのは評価できないわけではない。
しかし、それよりも、普段の答練は少ないところを選び、全国模試について、他流試合として他の予備校の模試を受けるのが効率的だ。
LEC答練では、午前に90分の答練、休憩はさんで80分解説。午後は、その周辺についてポイント解説&範囲の再確認講義。という形で行っていた。このカリキュラムはすばらしいと思いましたね。自然と全範囲をもう一度復習することになるわけです。
直前の復習は答練の解答冊子だけでよいのです。その中に全範囲の要点ものっていましたしね。
ちなみに各専門学校の講義コマ数と答練コマ数をあげておく。
(単純比較はできないので、下の注を参照)
TAC | OOHARA | LEC | |
会計・監査 講義 | 35回 | 22回 | 10回 |
分析 講義 | 8回 | 8回 | 4回 |
税務 講義 | 18回 | 12回 | 10回 |
論文 講義 | − | − | 1回 |
監査 答練 | 5回 | 5回 | 3回 |
会計 答練 | 8回 | 5回 | 3回 |
分析 答練 | 5回 | 8回 | 3回 |
税務 答練 | 5回 | 6回 | 3回 |
論文 答練 | 0回 | 2回 | 1回 |
生講義開講時期 | 1年半前の7月 | 11月 | 12月 |
(すべて2003年合格目標講座)
*TAC、大原は1コマ2時間30分、LECは3時間。
*TAC,LECは、会計・監査としてまとめて講義しているが、大原は監査10回、会計12回として講義を行っている。
*TAC、大原は論文講座は監査会計に含まれているようだ。
*LEC答練は午前中に1時間半の答練と解説(合わせて3時間)、午後は周辺解説講義(3時間)となっている。
*TACの会計答練には、3時間答練というものがある(他はすべて1時間半答練)ので、3時間答練は2回としてカウントしている。
これをみると、TACのコマ数の多さ、LECのコマ数の少なさが際立っている。
TACなど、「回数が増えたので、必要十分な量をじっくりと学習できます。」だと!?ふざけんじゃない。
私の主張からすると、コマ数の少ないLECがもっともよい専門学校となる。
今でもカリキュラムとしては、3校の中ではもっともすぐれていると考えている。
しかし、個々の講師、運営レベルで言うとLECには、多くの不満があったこともまた事実であり、もし、大原の連結補習、TAC答練(分析)、TAC全答練を取り寄せていなかったら、合格は危なかったと思う。
LEC講義では、会計監査の大半を担当していた角田講師が最悪だった。まず、講義の予習が十分でなく、何をやっているのかわからないときがある。説得力もなく、講師としての力量が足りない。会計答練の解説も、ひどかった。私は事前に角田講師とわかっていた講座は、すべてカセットテープで倍速で聞いていました。それでも、まだじれったいぐらい。「時間の無駄」とは、あのような講義を言うのでしょう。
とはいえ、TACの会計答練の解説(講師の名前知らず)も2コマぐらいはカセットで聞いたのですが、今度は非常にマニアックな講師で、微妙な表示の細かい部分にこだわるが、全体の流れをみていないという感じで、役に立ちませんでした。またTAC答練はひいき目に見ても、あまりにも最近の本試験の傾向と異なり、講師独自の路線を行っていると感じました。また、どうみてもこれは間違いでは・・・という解答例も散見されました(後から訂正の紙が送られてくることもあったが・・・・)。全答練の会計の解答修正もものすごく多かったですね。あまりに多いので、どこが間違っているかは確認しませんでした。どうせ見直す気もなかったですしね。この時は、よかったと思いました。最大シェアーのTACの会計答練がこれだけ本試験の傾向を無視しているのであれば、あまりTAC陣を恐れなくてもいいな、と。そういう点で、TAC答練を取り寄せたのは有意義でした。TAC答練は、真剣に解くことはせず、問題だけをみて、自分の穴をなくすのに使いました。
一方で、監査の答練解説を担当した講師(名前知らず)は、ものすごくよい講師でした。ポイントもばっちり、言うことにも説得力があり、「ああ実務でちゃんとした監査をやっているんだなあ」という感じがしました。私が監査でほぼホームラン答案を書けたのも、この講師のおかげです。LEC答練は、午前中1時間半の答練、休憩はさんで1時間20分の解説。午後は答練で出題した周辺をもう一度、講義する、という形であり、たいへん合理的でした。講義をきっちり聴いている人からすれば、3回の答練を受けることで、全範囲の復習になり、勉強の遅れている人にとっても、全範囲を勉強することになるので、ひとりでかってに「うーんよくできている」と感心したものでした。ただねー、会計の講師&問題がちょっとね。
また、LECの最大の問題点は、誤植、レイアウト不備が多いことでした。(テキスト、答練どちらも)。答練も誤植が多いし、答練終わってからしか、気づかないし、大事な部分だから、一所懸命貴重な時間を使って解いた問題が間違った前提だったと知ったときの、私の落胆と怒りは、相当なものでした。ちなみに、会計での誤植、レイアウト不備がもっとも多く、信用できない度はものすごく高かったです。
TAC答練は、ちらちらみただけで、捨て金となりました。監査は本試験の傾向から言って、事例問題の総合問題だと思ったので、特定の予備校の問題をみておくよりも、小六法と監査手続書を中心に勉強した方が効率的と思ったからです。
会計監査についてまとめると
どこまでが試験範囲か
出題可能性の軽重
ポイントのみの解説
専門学校の講義時間は少なければ少ないほどよい
ということを考慮して専門学校を選ぶべきである。
分析
これは、会計の素養があれども、なかなか独学では難しい科目かと思う。
別稿でも述べているが、分析というのはひとつの科目ととらえない方がいい。
「財務分析」「企業財務論」「原価計算」の三つの分野からなっている科目である。
その点で、専門学校の講義は重要だ。分析入門、財務論入門も行わなければならないからだ。
原価計算については、二次試験でも勉強していることから、範囲を示すのみでよいだろう。
救いがあるのは、比較的この科目は基礎範囲が狭い点。(いろいろ検討すると応用範囲は広いのだが、それはおいておく)
それでも、
財務分析 3コマ
企業財務論 2コマ
は必要かと思う。
会計監査と異なり、分析については「手取り足取り教える」ぐらいの気持ちでもいいのではないだろうか。
分析は会計監査と並ぶ、3時間120点科目なのに、みんな軽く見すぎている。と思う。
テキストも丁寧な方がよいだろう。なんせ入門からはじめるのだから。
答練は、会計監査と同様と思う。
LEC分析は、あの二次試験ではカリスマ講師の石井講師である。どんな講義をするのかワクワクしていたが、まあ、普通の講義(中の下)ぐらいと感じました。ともかく、「数式を覚えろ」の一辺倒。それじゃダメでしょ。しかし、テキストはよくできていましたので、まあ感謝しております。しかし、LECはファイナンス理論は、ひとこすりもしていないのだが、それはまずいんじゃないでしょうかねえ。せめて、企業財務論の基礎ぐらいやっておかないと・・・・。ここがLECの一番、痛い穴かと思います。
LEC答練の解説は別の講師でした(与語講師)。この方の解説も辛かった。石井講師も与語講師も、講義の時間に演習時間をとって問題演習をやらせるのだが、私はこれは間違っていると思う。時間が比較的ある二次試験の講座ならともかく、三次はみんな貴重な時間をやりくりして講義を聴きに来ているわけであるから、密度の濃い解説講義をすべきである。しかも、個人によって勉強の進捗度は違うのであるから、時間をとってもらっても、時間内にできない人はあまり意味がない(私がそうだったので、この両講師とも後半はすべてカセットテープでフォローした)。カリキュラムはよくできているのに、講師によって台無しになってしまったよい例である。
TAC分析は役に立ちました。私はファイナンス理論がやばいと思ったので、TAC答練でそこだけ補おうとしました。本試験ではちょっと変わった問題だったので、結果的にはどちらにせよ対処できなかったのですが・・・。TAC分析答練では、ファイナンス理論を比較的きちんと取り上げていたし、全答練でも問題の半分はファイナンス理論でした。感謝しております。というか、TAC全答練を受けて、試験委員と過去問をもう一度、調べてみたら、ファイナンス理論の重要性がわかったというのが真相なのですが・・・・。ただ、TAC答練解説の講師(名前知らず)の解説自体はひどかったですね・・・。でも、重要性を認識させてくれただけでもTAC答練分析には感謝です。
税務
税務も分析と同じく独学では難しいだろう。
税務は習得すべき基礎範囲が多いことがあげられる。
これは10コマ分ぐらい講義があっても仕方がない。
ただ税務はやりだすときりがないくらい、応用範囲は広い。
だから適当なところであきらめて、「これ以上、複雑難解な問題がでたら、テキトーに答えてあきらめる」というスタンスを持つ必要があり、どこで、そのあきらめポイントを設定するか、が講師の力量である。講師は、受験生のレベルを常に把握し、「このレベルでは埋没問題になるから無視!」という判断を受講生に常に示すことが必要だろう。でも、ここはその講師の講義を受けないとわからないよね。
LEC成澤講師にはお世話になりました。この方は受験生のレベルをよくしっており、思い切って「ここは切れ、出てもどうせ誰もできない」ということがいえる講師です。講義、答練の問題、解説も適切であり、よかったです。ただ答練では計算問題しか出題しないのだが、理論問題を書く練習を、もう少し、させてもらってもよかったのではないかと思う。成澤講師がここをみているとは思わないが、3回の答練で、所得税2回、消費税1回ぐらい、理論問題で出すのも一興ではなないでしょうかねえ。
TAC税務答練は、ちらっとみただけで、無視しました。本試験の傾向と成澤講師の方針で十分と感じたからです。
論文
論文対策はだれもまともにはしないでしょう。
過去問の傾向と専門学校の予想問題を解説する講座が1コマあればいいでしょう。
以上、会計監査についてのボリュームが多いが、それだけ「合成の誤謬」がおきている科目だと思ってください。
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