TOP > TAC財表をきる! (2004/11/23)
とはいえ、財表はいろいろな考え方がある。そのひとつの立場から王者を批判してみた。
TAC講師陣は有名税として受け入れて欲しい。
さて、論文試験解答速報のつづきである。
財表(第4問)の「問2」
『税効果会計の方法として資産負債法と繰延法がある。両者の内容を簡潔に説明し、繰延法を適用する場合の問題点を指摘しなさい。』
『(資産負債法と繰延法の説明については省略) 資産負債法によれば、差異が解消される将来の年度に適用される税率が税効果会計に適用されるが、繰延法によれば、差異が発生した年度の課税所得に適用された税率が税効果会計に適用される。そのため、繰延法を適用する場合には、法人税等について税率の変更があった場合に、将来の法人税等の支払額に対する影響が表示されないという問題点がある』(TAC解答速報2004より)
まあ、確かにまちがっちゃいない。しかし、一番重要なことが抜けている。
繰延法の問題点は「繰延税金資産の資産性に疑義がある場合がある」ということだ。
その昔、連結財務諸表だけに税効果が適用されていた頃は繰延法であった。個別財務諸表に税効果が導入されないのは、商法上、繰延税金資産に資産性があるとは認めがたいためであった。なんてったって、繰延法は繰延税金資産の回収可能性を勘案せず、計上したら、差異が解消されるまで計上しっぱなしだったからである。そこで、個別財務諸表上でも税効果会計を導入するためには繰延税金資産の資産性をがっちりと固める必要があり、そのためには回収可能性を勘案する資産負債法を導入するのがもっともてっとり早かったのである。
という背景をちょこっと知っていれば、この問題の最大の論点を逃すことは絶対にない。
(そう、学問の歴史を知ることはとても重要なのだ。それは、ずっと前にここの中に書いてありますのでご参照を。)
したがって、こう書かなくてはならない
「繰延法を適用した場合、繰延税金資産の回収可能性について検討することをしないため、繰延税金資産の資産性に疑義がでてくる問題がある。」
と。
理由を書くとすれば「なぜならば、繰延税金資産は将来の課税所得が十分に発生してはじめて将来の支払税金の減少という意味での資産性を持つのであり、繰延法は将来の課税所得を何ら考慮していないからである。」てな感じであろうか。(もうちょっとマシな言い回しがあるような気がするが、時間が限られているのでこんな感じで許していただこう)
その他に書くとすれば、「また税率変更があった場合でも繰延法は繰延税金資産(負債)の見直しを行わないため、税率変更の影響を財務諸表本文にて表示できないという問題点がある。さらに繰延法は損益計算書からのアプローチであるため、全部資本直入法における有価証券評価差額について繰延税金資産(負債)を認識することが難しいという欠点がある。」という感じだろうか。
税率変更については加点事由であろう。しかし、それは何より、「資産の再評価を行うか否か」(回収可能性を検討するか否か)という論点に含まれてしまっている。枝葉末節である。枝葉末節だけ書いて、肝心のことを書かないのはそりゃ、アカンでしょう。しかも、「回収可能性の検討」(または資産性の見直し)という文言を入れずに「将来の法人税等の支払額に対する影響が表示されない」などという、わかりにくい表現をしても、試験委員は「わかっているんだか、わかっていないんだか、わかんないね」ってな感じになると、私は思う。
税率変更等の加点事由を書かなくても、「資産性の再評価を行わない問題点」を指摘するだけで、十分に合格点になるだろう・・・。とまではいわないが、これで大失態は防げるだろう。
論者によっては、繰延税金資産の資産性の議論よりも、税率変更の議論の方が本質的だ!という人もいるかもしれない。
ではその人に問いたいが、「税率変更がないのであれば、繰延法でも問題ないのか?」と。
結局、「資産性」を正確に測定しようとするためには、繰延法では問題がある、ということに問題は帰結するはずだ。
同じことのエクスキューズを書かなくてはいけないが、私の解答がベストだというつもりは全くない。
しかし、本筋ははずしていないことは確信しているので、少なくともTAC解答よりはマシである。
そして何より、「枝葉末節でない、基本的なことだけで解答できるため、勉強の努力も最小限で済む」ということは、受験実務?において有効なことだと信じている。
(こうした理解のために基本書が必要なのだよ!と言っておこうか)
苦労して枝葉末節を重視して、本筋をはずのか、満点はとれなくても基本重視で6割を目指すのか、あなたはどちらを選ぶのだろうか。
まあ、TAC講師陣をあまり攻め立てるわけにもいかないか。監査小六法には、税率変更の影響のことばかりが書いてあるもんね。確かに実務では重要なことだけど・・・・・。解答速報を書くときに、監査小六法に書いてあることを書いておけば、まあ、間違いないだろう、と思ってしまっても無理はない・・・。
細かい知識をいくら知っていても、大原則を知っていないと、とんちんかんなことを書いてしまうよい例である。
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